第10回大使レター
平成26年10月8日拝啓
爽秋の候,皆様におかれまして,益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。今回の大使レターでは,(1)安倍総理が今般の国連総会の場を中心に展開した危機対応の外交,(2)9月末にワルシャワを訪問した我が国有力経済団体、経団連のミッションの成果について紹介します。
(1)安倍総理の国連総会出席
安倍総理は,国連総会において,世界は今深刻な危機に直面しており,我々は国連の旗の下に結束すべきであると呼びかけました。各重要課題に関する我が国の施策は以下のとおりです。
ウクライナ危機への我が国の対応
安倍総理は,我が国のこれまでの対ウクライナ支援に言及した上で,東部ウクライナ復興のための更なる追加支援を準備している旨発表しました。日本政府が3月に表明した最大15億ドルの経済支援は着実に進捗しています。1億ドルの開発政策円借款は既に実施済みであり,350万ドルのノンプロ無償も7月に署名を終えています。また,キエフのボルトニッチ下水処理場改修事業のための11億ドルの円借款も早期署名に向け調整を進めています。この他,我が国は本年4月以降も,様々な対ウクライナ支援を発表・実施しています(注)。
我が国は,引き続き、力による現状変更は断じて認められないとの基本的立場に立ち,G7との連携を重視して対応しています。9月24日には,ロシアに対する武器等の輸出制限の厳格化,ロシアの特定銀行等による証券発行等の禁止措置を柱とする追加制裁を発表しました。他方,我が国は同時に,ロシアに責任ある国家としてふるまうよう働きかけていくために,対話も重要であると考えています。
(注)本年4月以降に我が国が発表・実施した対ウクライナ支援
ISIL(イラク・レバントのイスラム国)への我が国の対応
安倍総理は,ISILの活動が国際秩序に対する重大な脅威であるとの認識を示した上で,地域の人道危機に対して迅速に対応し,過激主義の定着を阻止することが最も重要であると強調しつつ,日本として新たに5,000万ドルの緊急支援を直ちに実施する方針を表明しました。我が国は,米国を含む国際社会のISILに対する闘いを支持しています。その基本姿勢の下において,日本としては,難民支援や周辺国への人道支援など,軍事的貢献でない形で可能な範囲の支援を国際機関と行っていく考えです。
エボラ出血熱との闘いへの我が国の関与
エボラ出血熱は,アフリカだけではなく,世界の安全保障を脅かしかねない問題です。今般のエボラ出血熱の流行に際して,我が国は,専門家をWHOの一員として派遣すると共に,総額500万ドルの資金援助を実施しています。安倍総理は,今後,日本政府が医療従事者への防護具を50万着供与し,総額4,000万ドルの追加支援を行う方針を表明しました。なお,昨年開催された日本政府主導のアフリカ開発会議TICAD Vにおいて,我が国はアフリカにおける健康問題に対処するため5億ドルを準備し,健康・医療に携わる約12万人を対象とする教育プログラムを開始することを表明しています。
国連改革に関する我が国の立場
安倍総理は,日本が1956年に国連に加盟して以降58年にわたり,国連の責任ある加盟国として貢献・努力していきたことを指摘した上で,志を共有する加盟国が力をあわせて国連を21世紀の現実に合った姿に改革し,日本がその中で常任理事国として相応しい役割を担っていきたい旨述べました。今回の国連総会においては,コモロフスキ大統領もその一般討論演説において,国連安保理のウクライナ危機等に対する非効率性を指摘し,メンバー拡大と共に効率性を高める形で安保理を改革すべきであるとの考えを示されており,日・ポーランド両国は安保理改革の必要性につき同じ認識を共有しています。我が国としては,国連創設70周年を向かえる来年2015年に国連安保理改革に向けて実質的進展がみられるようポーランドと是非緊密に連携していきたいと考えています。
(2)経団連ヨーロッパ地域委員会訪欧ミッションのポーランド訪問
本年9月22日,23日に経団連ヨーロッパ地域委員会訪欧ミッション(団長:佐藤義雄同委員会共同委員長)が当地を訪問しました。経団連のポーランド訪問は2012年4月に続くものですが,同一の日本国大使の在任期間中に経団連ミッションが2回訪問することは極めて稀であり,日本の経済界のポーランド経済への関心の高さを伺わせます。
ミッションの滞在期間中,ピエホチンスキ副首相兼経済大臣,シュチュレク財務大臣,ソコウォフスキ大統領府次官及びポーランド民間経営者連盟との会談を行いました。会談の中では,経団連側より,日EU経済連携協定(日EU・EPA)に関し,安倍政権が目指す2015年の大筋合意に触れつつ,同EPAの早期合意に向けポーランド政府,経済界からの支持を要請したほか,両国間の一層の経済関係強化に向けた活発な議論が交わされました。ポーランド側からも,経団連の呼びかけに対し日EU・EPAの早期合意を歓迎する等の好意的な回答がありました。
なお,9月22日はまさにコパチ新政権が発足した日であり,そのような多忙な中で2人の閣僚を含む要人が経団連ミッションとの面談に臨んでくれました。これは両国関係の重要性を改めて示すものであります。
今年の後半はクラクフの日本美術技術博物館設立20周年記念式典(11月)など引き続き両国にとり重要なイベントや要人訪問が目白押しです。二国間関係発展のために引き続き皆様のご協力をお願いします。