第13回大使レター
平成27年10月28日総選挙が美しい「黄金の秋」の中で実施された直後ですので,皆様何かとお忙しくお過ごしのことと存じます。今回の大使レターでは,この選挙運動期間中の出来事として(1)高円宮妃殿下のポーランド御訪問,(2)環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉の大筋合意,(3)国連安保理非常任理事国への我が国当選,についてご報告します。
高円宮妃殿下のポーランド御訪問
10月半ば,高円宮妃殿下が21年ぶりにポーランドを御訪問になり,緊密な両国関係を象徴するものとなりました。妃殿下は,1994年にワレサ大統領やワイダ監督夫妻とともに日本美術技術博物館(Manggha館)の開館式典に臨席されましたが,今回,21年ぶりに同館を再訪され,両国の文化交流の拠点として大きく成長した姿を感慨深くご覧になりました。ワルシャワでは,フレデリク・ショパン国際ピアノ・コンクールを参観されたほか,ワルシャワ国際映画祭「ジャパン・デー」へのご出席,聴覚障害者学校へのご訪問などを通じて,ポーランドの多くの方々と親しく交流されました。
ドゥダ大統領夫妻とのご会見においては,21年前の妃殿下ご来訪時の想い出や2008年の故カチンスキ大統領訪日にドゥダ大統領が同行されたことなど,両国関係の深い絆に話が弾みました。
高円宮妃殿下の今回のご訪問は,2017年に国交回復60周年,2019年に国交樹立100周年を迎える両国にとって,貴重な先駆けとなりました。
TPP大筋合意とアベノミクス第二ステージ
10月5日,5年余の交渉を経て,TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉が遂に大筋合意に達しました(交渉参加12カ国:日本,米国,カナダ,豪,NZ,マレーシア,シンガポール,ベトナム,ブルネイ,メキシコ,ぺルー,チリ。世界のGDP約4割を占める。)。 これにより成長著しいアジア太平洋地域に世界最大の経済圏が誕生します。更に,幅広い分野で21世紀型の新たなルールづくりが行われることの意義は極めて大きなものがあります。TPP協定は,地域の他国にも求心力をもたらすことでしょう。TPP交渉の大筋合意によって,環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)や日EU・EPAの交渉にも刺激を与え,世界規模で自由貿易圏が広がることが期待されます。本年中の大筋合意を目指す日EU・EPAについては,ポーランドの支援を引き続きお願いします。
TPPは,安倍総理が進めるアベノミクスの重要な柱でもあります。貿易,投資,サービスなどの自由化により対外経済活動を活性化することは,成長戦略の要です。TPP妥結により,アジア太平洋地域の成長を取り込み,繁栄を共有することができるようになります。9月24日に発表されたアベノミクス第二ステージは,GDPを20%拡大して600兆円(約5兆ドル)にすることや,人口減少時代を迎えた我が国で将来人口一億人を維持することを目指しています。これらの動きにより,日本経済が,着実な成長軌道に乗ることが期待されます。
日本の国連安保理非常任理事国当選と国際貢献
10月16日,我が国は,国連総会において,2016年から2年間,安保理非常任理事国に選出されました。この当選によって,我が国は国連加盟国中最多となる11回目の非常任理事国に就任します。これは我が国の国連の場における長年の実績及びその姿勢が,国際社会において高く評価され,かつ,今後の一層の貢献が期待されていることの表れであります。
我が国は,安保理において国際の平和と安全に関わる幅広い課題に積極的に貢献していきます。具体的には,国連平和維持活動(PKO)及び中東・アフリカ地域等の平和と安全のための積極的貢献,北朝鮮情勢についての対応等に取り組んでいきます。
欧州に多大な影響を与えている難民問題について,我が国は人道的配慮や欧州への連帯から,既に,具体的な支援を打ち出しています。即ち,シリア・イラクの難民・国内避難民に向けて昨年実績の約3倍となる約8.1億ドルの支援を実施し,また,セルビア及びマケドニア等の難民・移民の受け入れに取り組むEU周辺国に対しても新たに約250万ドルの人道支援を行うこととしました。
創設以来70年を迎えた国連の現下の状況に合わせた改革が必要とされています。特に安保理改革は急務です。我が国は,非常任理事国として,また,問題意識を共有するポーランドをはじめ志を同じくする諸国と連携しつつ,安保理改革の実現に向けて努力していきます。
山中 誠