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第8回大使レター

2014年4月17日

拝啓


陽春の候となりましたが、皆様にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。今回の大使レターでは、緊迫したウクライナ情勢に関する我が国の立場・政策につきご紹介します。

ポーランドは、その歴史や隣国としての立場を踏まえてウクライナ問題に関するEUやNATOの議論をリードするなど重要な役割を果たしており、右役割に敬意を表します。隣接する大国による軍事介入やその威嚇を歴史的に身をもって体験しているポーランドなどヴィシェグラード諸国(V4)にとって、本件は極めて重大で現実の問題であります。地理的に離れていますが、我が国もウクライナ危機に大きな懸念を有しています。安倍晋三総理も「対岸の火事ではない」ことを強調しています。我が国は、これまでもウクライナを始めとする東方パートナーシップ諸国の民主化、市場経済化支援を行ってきており、昨年11月の「V4+日本」外相会合ではモルドバの医療分野への共同プロジェクトに合意するなど、V4諸国とも緊密に連携しています。


我が国の立場・政策

我が国は、ウクライナ情勢に関し節目節目で外務大臣談話を発表した他、G7としても既に3回にわたって声明・宣言を発出してきました。我が国は、ウクライナの主権、独立、領土一体性を支持すると共に、ロシアによるクリミア「編入」という明白な国際法違反を強く非難しています。G7が本年6月のソチ・サミットへの不参加の決定を行ったことは、ご承知のとおりです。更に、我が国は、独自措置として、査証緩和に関する協議の停止、新投資協定、宇宙協定及び危険な軍事活動の防止に関する協定の締結交渉開始の凍結を実施しています。

現下の危機の中で新生ウクライナを支援していくことの重要性については論をまちません。我が国は、3月24日、ウクライナに対し今後最大15億ドルの支援を行う方針を発表しました。右支援は、世銀等との協調融資による財政支援を目的とする円借款、下水処理場改修事業への円借款、日本貿易保険(NEXI)によるクレジット・ラインの設定、日・EBRD協力基金による技術協力支援、ノンプロジェクト無償資金協力などの様々な支援内容を含んでいます。また、我が国はOSCE「政治対話促進及び少数民族監視ミッション」に10万ユーロを拠出しており、最近派遣された同ミッションには日本人も参加していました。


国際社会全体の問題としてのウクライナ危機

ポーランドは、これまで歴史その他難しい問題に直面しつつも、ロシアとの関係改善に尽力してきました。我が国も、戦後69年間にわたって北方領土問題を解決してロシアとの平和条約を締結するための努力を傾注してきました。安倍総理がプーチン大統領との間で積極的な首脳会談を行ってきたのもそのためです。

今般のウクライナに対するロシアの行動は、国際関係の基本を構成している主権、独立、領土の一体性を損なうこととなる問題です。ロシアはウクライナの憲法を尊重し、ブダペスト宣言を始めとする国際約束、国際法に従って行動すべきです。如何なる国であっても、国際法を無視して「力を背景とした現状変更」を行うことは決して認められません。「力を背景とした現状変更」の試みは遺憾ながら東アジア(南シナ海や東シナ海等)においてもみられます。このようにウクライナ問題は国際社会全体の問題であります。国際社会は、現状追認や敗北主義に陥るべきではなく、力による現状変更を認めない国際的なSolidarityが引き続き必要とされています。

我が国とポーランドは基本的人権や法の支配等の基本的価値を共有する国であり、こうした点は昨年6月の安倍総理のワルシャワ訪問時にも再確認されました。我が国が東方パートナーシップを引き続き支援していくこと、安全保障面の対話を深めていくこと、エネルギー協力を推進すること、「V4+日本」協力を更に進めていくことなど、日・ポーランド首脳間で意見の一致をみた点については、ウクライナ危機への対応においても基本となるものであります。我が国は、基本的価値を共有するポーランド、EU、NATO、そして同盟国たる米国をはじめとするG7と本件で引き続き連携していく所存です。


敬具