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大使からの手紙

平成24年1月4日

よい年をお迎えのことと存じます。昨年、我が国では東日本大震災がありましたが、ポーランド政府・国民からの暖かい支援もあり、未だ課題は残っているものの、復旧・復興が着実に進行しております。

私は、着任してから3カ月ほどとなりますが、今回、第1回の大使レターを送らせていただくことを喜ばしく存じます。このレターに対するご意見、コメントなどがあれば歓迎します。


1 日本企業による投資が目立った2011年

2011年は日系企業による対ポーランド投資に勇気づけられる年でした。まず、何よりも、ユーロ危機で欧州経済の先行きに対する不透明感や不安が強まる中、ポーランドにおける日本企業の投資が次々に発表されたからです。PaIiIZによれば,2011年の対ポーランドの最大の投資国は日本であり,その投資額は1億7600万ユーロに達しました。また,個別案件でも日本板硝子の子会社であるピルキントンの投資が最大であったと発表されています。この他にも日系企業による工場拡大や再投資の事例があり、現下の欧州情勢においても日系企業がポーランドの投資環境を良好であると判断していることを示すものです。また、住友化学によるディーゼルエンジン車に装着するすす除去フィルターを製造する工場の新設は、EUの厳しい環境基準に対応するものです。ロッテ社によるヴェルデ社買収は、ヴェルデ社のブランド力を活用して市場シェアの拡大を図るとともに、欧州全土でロッテ製品を展開することを目指す投資案件です。明治安田生命によるポーランドの大手保険グループEuropa Group買収も、日本の保険会社として初めてポーランドで事業展開できるようになったという点で画期的です。こうした事例は、新しいタイプの投資という意味で、興味深い動向だと思います。


2 アートと経済の融合にみる日ポ経済の新たな可能性

ポーランドの経済力向上とともに両国の経済関係にもうひとつの新しい展開がみられます。最近発売となったソニーのプレイ・スティション・ビタ用ゲーム・ソフトをクラクフを拠点とするゲーム・ソフト製造会社Bloober Teamが開発しました。これは、ポーランドにおけるゲーム・ソフト・デザインの質の高さを証明するものです。私は、先般クラクフのマンガ博物館において開催された『ポーランドの映画ポスターに見る日本映画』を鑑賞する機会がありました。ポーランドのアーティスト達の豊かな表現力に感銘しました。最近、風呂敷(物を包むための正方形の布で日本伝統の意匠)のデザイン・コンテストがありました。その結果ポーランドの高校生の作品が最優秀賞を獲得し、その図柄は商品化されることとなっています。近くズドロイェフスキ文化大臣ご臨席のもと大使公邸で表彰式を行う予定です。  デザイン力やアーティスティックな表現力などは、今後ポーランドが経済力を一層高めていく上で重要な要素になるものと思われます。そして、こうしたソフト・パワーともいうべき無形の才能に日ポーランドの経済関係強化につながる大きなポテンシャルがあるように感じます。


3 日EU・EPA

我が国とEUとの間で懸案となっているEPA交渉については、スコーピングの作業が進捗中です。早期に同作業を終え交渉を開始したいと思います。ポーランドを含むEU側の関心の非関税障壁等については、日本政府は野田総理のイニシアティブのもと積極的に取り組んでいます。私は日EU・EPAが締結されれば、我が国とEU/ポーランドの間の経済関係は大きく拡大すると信じております。また、日ポーランド間に見られる上述のような新しい経済関係の展開も更に促進されるものと考えます。


在ポーランド日本国大使
山中 誠