| Japanese (日本語)

第6回大使レター

2013年7月4日

拝啓


草木の緑も濃くなる夏も盛りを迎えていますが、いかがお過ごしでしょうか。今回は、歴史的な訪問となった6月の安倍総理のポーランド訪問についてご報告します。


1 歴史的な訪問

日本の総理がポーランドを訪問するのは、2003年の小泉総理以来、実に10年ぶりであり、ポーランドのEU加盟後では初めてでした。安倍総理は、1985年に当時の安倍晋太郎外務大臣の秘書官としてポーランドを訪れてから28年ぶりであるが、大きくポーランドが発展していることを感じた、と述べ、ポーランドのダイナミックな発展を歓迎していました。 我が国では、久しぶりにポーランド関連のニュースがトップ・ニュースとして報じられました。日本国内におけるポーランドへの関心が改めて高まることが期待されます。  今回の訪問では、日ポ首脳会談に加えてヴィシェグラード・グループ(V4)と日本の5カ国が初めて首脳会談を行ったことが画期的でありました。ポーランドが議長国を務めたV4側にとっては、その存在感を誇示する機会となりました。また、日本側にとっては、安倍政権の外交フロンティアを広げるものとなりました。  安倍総理にとっては、6月15日から1日余りの非常にタイトな日程ではありましたが、トゥスク首相をはじめポーランド政府・国民の温かいもてなしのおかげで素晴らしい歴史的な訪問となりました。なお、安倍昭恵総理夫人は、18日まで引き続きポーランドに滞在し、古都クラクフにまで足を伸ばし、総理の名代として積極的な夫人外交を展開しました。


2 日・ポーランド首脳会談

最初に実施された日・ポーランド首脳会談では、ワーキング・ランチも含めて十分な時間が割かれ、二国間関係、経済関係、地域情勢等について有意義な意見交換が行われました。 二国間関係に関しては、両国の良好な関係を一層発展させ、あらゆる分野で相互利益に基づく関係を強化することで一致しました。防衛協力については、3月のシェモニャク国防大臣訪日を踏まえて今秋にも防衛当局間協議を初めて開催することが合意されました。両国の一層の防衛協力を象徴する出来事として、二国間史上初めて日本の海上自衛隊の練習艦隊がグディニアを訪問する(8月7日~10日)予定です。 経済分野では、良好な二国間経済関係を更に強化していくとの観点から日EU・EPA交渉の早期妥結に向けて協力していくことを確認しました。エネルギー分野では、原発、再生可能エネルギー、クリーン・コール技術、スマート・グリッド等の協力を進めていくことについて議論が行われました。また、両国若者の交流を促進するため、現在交渉中のワーキング・ホリデー制度の早期導入に向け、交渉を加速化することで一致しました。更に、両首脳は、2014年の日本美術技術博物館創設20周年記念及び「V4+日本」交流年が大変良い機会であるので、互いに機運を盛り上げていくことで一致しました。


3 「V4+日本」首脳会合

EU内で存在感を高めつつあるヴィシェグラード・グループ(V4)と日本との初の首脳会合では、「V4+日本」協力、安全保障、経済問題等について話し合われました。 V4と日本との間には、すでに10年の協力の歴史があり、その底流には民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値の共有という事実があります。今回の首脳会合では、これを更に具体的に発展させていくべく、共同声明「共通の価値観に基づく21世紀のパートナーシップ」が採択・発表されました。このパートナーシップに基づき東欧諸国や西バルカン諸国の民主化及び市場経済化に向けて連携していくことを確認しました。また、V4と日本は援助協調を進めるため、ODAセミナーの開催などに合意しました。11月に行われる東方パートナーシップ首脳会合には、日本からハイレベルが参加する意図を伝達し、V4側は、日本の積極的な外交を歓迎しました。 安全保障の分野では、5カ国首脳は、東アジアと欧州の安全保障が相互に関連しているとの認識の下、国際法に基づく海洋の秩序の維持という基本的な考え方を確認しました。また、東アジアにおける安全保障環境に照らして、この地域に対する武器・汎用品・技術の輸出管理を効果的に行っていく重要性を確認しました。さらに、5カ国首脳は、安全保障分野での協力を一層進めるべきであるとの認識で一致し、近く安全保障セミナーを開催することで合意しました。 経済分野では、一層協力していくことにつき確認しました。また、V4各国においては多くの日系企業が進出し、約12万人の雇用を創出しています。エネルギー分野では、日本の高い技術力への関心が表明され、日本とV4諸国との間で今後協力の方途を探っていくことになりました。また、現在交渉中の日EU・EPAの早期妥結に向けて協力していくことを確認するとともに、安倍総理より、日本における「アベノミクス」の取組、これから参加するG8サミットについての説明が行われました。  なお、日本とV4諸国の人的交流を促進するため、2014年を「V4+日本」交流年とし、各国が親善大使を任命することとなり、我が国からはピアニストでもある女優の松下奈緒氏が、ポーランドからは歌手のアンナ・マリア・ヨペク氏が任命されることとなりました。


4 今後

安倍総理による歴史的なポーランド訪問により生まれた貴重なモメンタムを活かしつつ、今回の日・ポーランド首脳会談及びV4+日本首脳会合で合意された様々な事項について着実に実行されるようフォローアップしていくことが重要です。 V4議長国はポーランドからハンガリーに引き継がれましたが、「中東欧の雄」としてのポーランドの役割は引き続き極めて重要であります。このフォローアップに当たっても皆様のご支援とご協力を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。


敬具