二国間情報
戦略的パートナーシップに向けた共同声明
小泉純一郎日本国総理大臣とレシェック・ミレル・ポーランド共和国首相は、小泉純一郎総理のポーランド共和国公式訪問に際し、2003年8月19日にワルシャワで会談を行い、以下の声明を発出した。
日・ポーランド関係の概観と戦略的パートナーシップに向けての展望
日本とポーランドの伝統的な友好関係を再確認しつつ、双方は、両国関係が冷戦終了後に新しい段階に入り、とりわけ拡大して10ヶ国を取り込む2004年のEU拡大などの欧州における構造的変化の中で、今日、さらなる協力に向けて可能性を広げつつあることを、満足の意をもって確認した。
双方は、2002年7月の天皇皇后両陛下のポーランド共和国公式訪問は、画期的な出来事であり、二国間の友好関係と相互理解を深める上で多大な影響を及ぼしたことを想起した。
双方は、さらなる協力に向けての新たな機会が、以下の諸点によって作り出されていることにつき見解の一致を見た。
- 「善意」として特徴づけられる、あらゆるレベルにおける両国間の、特に両国民の間の長い交流の歴史の特別な性格
- 共通の基本的価値観に基づいた、両国間の協力の新たな可能性を開くこととなった民主主義と市場経済に向けた改革の努力の中で、ポーランド共和国が成功裏に達成した成果
- 日本が世界的レベルで戦略的パートナーシップを確立してきたEUに、ポーランド共和国が加盟すること
双方は、EUの来るべき拡大が、日・ポーランド関係のさらなる強化に向けた新たな展望を開くことを深く確信している。この拡大は、政治、経済、社会及び文化の領域における日本とポーランドの協力の急速な発展に向け、更なる推進力を与えることになる。また、この拡大は欧州における日本のプレゼンス及びアジアにおけるポーランドのプレゼンスを高めるためのより良い条件を創出することになる。
双方は、EUの拡大は、とりわけアジア欧州会合の枠組みにおいてEUとアジア間の対話の発展にさらなる価値をもたらすという意見を共有している。日本は、「アジア・欧州協力枠組み2000」に則った形でポーランドが可能な限り早期にASEMに加盟することを含め、EU・アジア間の対話へのポーランドの参加を歓迎する。
双方は、欧州及び世界的な広がりの中での双方における相互の関心事項について「戦略的パートナーシップ」を確立することを決意した。これは、EU内におけるポーランド共和国の役割と両立するばかりではなく、世界の安定と繁栄に貢献し、また日本とポーランド共和国の双方に、EUとの関係、EU内の関係及びEUを超えた関係というより広い文脈において利益をもたらすことになる。
2004年のEU拡大は、長期にわたる欧州の分断を最終的に終わらせ、地域全体の安定に貢献する重要な功績の一つであることを認識しつつ、またポーランド共和国が、円卓会議に代表される民主化への過程を通じた共産主義体制からの転換を達成した1989年以降、加盟プロセスのために払ってきた努力を称賛しつつ、日本側は、両国の関係が二国間の側面のみならず、日・EU間の全体的な協力という文脈においてもさらに発展することにつき、心からの希望を表明した。
日本は、EU基準に適合する経済及び法制度の再構築におけるポーランドの功績を認識する。2004年5月1日時点でEU域内市場の一員となることで、ポーランドは、直接投資を含めた日・ポーランド及び日・EU経済協力のさらなる発展に向けた新たな機会を提供することが可能となる。日本とポーランドは、二国間関係の発展から生じる、またEU拡大の枠組みの中で生じる利益と価値に最大限の配慮を払う。
日本側は、EU全体との関係強化のみならず、個々の加盟国及び加盟国の集団との関係を強化する意思を表明した。この関係で、ポーランド側は、相互の関心事項についての日本とヴィシェグラード・グループとの事務レベルでの協力を歓迎する。
政治的側面及び相互に関心のある国際問題
以下に挙げる一連の主要国際問題に関して双方が見解の一致を見たことに対し満足の意を表しつつ、双方は、二国間関係に基づき、また既存の又は適切な場合に設立される新たなフォーラムを最大限に活用しながら、多国間の枠組みの中でさらなる協力の可能性を追求し、「戦略的パートナーシップ」の精神に基づき、政治的対話を進める強い意思を確認した。
イラク復興に関して、日本側は、ポーランド部隊の派遣やイラク中南部地帯における安定化のための多国籍部隊の指揮、国際調整委員会の議長などのポーランドの多大な貢献を高く評価した。ポーランド側は、日本の自衛隊のイラクへの派遣を可能にするイラク復興支援特別措置法の成立を歓迎し、イラクにおいて自衛隊と協力したい旨のポーランド側の希望を表明した。双方は、国際社会と最大限協力しながらイラクの復興を進めることを重要視した。この関連において、双方は、2003年10月に開催予定のイラク復興会合に可能な限り多くの国が積極的に参加するよう働きかけを行い、人道支援や復興支援、また治安を維持し政治的プロセスを加速させるための他の形での支援によって、イラクの人々により運営される政府の樹立プロセスにさらなる貢献を可能にさせる意思を表明した。
双方は、北朝鮮の核問題に関して深刻な懸念を表明し、北朝鮮に対し、事態を悪化させる如何なる行動をも行わないこと、関連するあらゆる国際取極めを遵守すること、ならびに検証可能な形で不可逆的に、完全かつ迅速な核兵器プログラムの廃棄を行うことを強く求めた。
双方は、核問題を含む北朝鮮に関する問題が、平和的かつ外交的手段によって解決されるべきであることについて意見の一致を見た。そして、北朝鮮問題の包括的な解決を模索するための六者会合が開催されることを歓迎した。
ポーランド側は、日朝平壌宣言に基づき、北東アジア全域の平和と安定に貢献するような方法で、核ミサイル及び拉致問題等の未解決の問題を包括的に解決し、北朝鮮との外交関係正常化を達成するという、日本の基本的立場への完全な支持を表明した。
双方は、国際テロリズムの脅威が依然として深刻であり、国際社会が、国際テロリズムとの闘いにおいて団結を続けることが重要であるとの見解を共有した。これに関し、双方は、12のテロ防止関連条約及び関連する国連安保理決議の履行へのコミットメントを再確認した。双方はまた、二国間及び国連を含む多国間の枠組みの中で反テロリズム協力を促進する意図を確認した。
双方は、国際連合及びその他の国際機関の枠組みの中で積極的に協力する決意を改めて確認した。双方は、21世紀における国際の平和、安定及び繁栄を促進するための国連の重要な役割を認識し、安保理常任理事国及び非常任理事国の拡大を含む安保理改革を始めとする国連改革の早期実現のために共に取り組むことの必要性を強調した。この関連で、日本側は、「21世紀の幕開けにおける国連のための新たな文書」を定めるという第57回国連総会におけるポーランド共和国外務大臣による提案を促進するポーランド側のイニシアティブに留意し、ポーランド側は、日本の安保理常任理事国入りへの支持を改めて表明した。
国連事務総長に提出された人間の安全保障委員会の報告書を想起しつつ、双方は、人間が尊厳をもって生きることのできる社会造り、国造りを実現するために、個々人の保護及び能力強化により人間の安全保障を推進することの重要性を確認した。
双方は、両国の外交政策及び二国間関係についての課題を討議するため、双方の外務省の代表者による定期協議をワルシャワと東京で交互に開催する意思を表明した。
双方は、2003年5月の米大統領のポーランド共和国訪問の際に発表された拡散安全保障イニシアティブ(PSI)への支持を確認し、拡散防止のための国際的努力を強化するため、PSIの促進に協力する用意があることを再度表明した。
日本側は、「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」へのポーランド共和国の参加を歓迎し、双方は、このパートナーシップを促進するために協力する意思があることを確認した。
双方は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は、国際社会にとって深刻な脅威を与えることにつき見解の一致を見た。これに関し、双方は、その精力的な活動が日本側によって高く評価されており、ポーランド代表が現在議長を務めているミサイル技術管理レジーム(MTCR)を通じた努力を含め、この問題に取り組むため、様々な活動においてさらなる協力を行う意思を再確認した。
双方は、京都議定書が、気候変動に対する国際的取組み強化の極めて重要な第一歩であることを認識し、同議定書の未締結国に対して速やかに締結するよう強く求める意思を確認した。
双方は、気候変動対策の実効性を確保するため、全ての国が参加する共通のルールの構築のために協力する意思を表明した。双方はまた、京都メカニズムの下での共同実施及び排出量取引における二国間協力に対する期待を表明した。
経済的側面
双方は、貿易を含めた経済的結びつきの強化は、二国間関係全体の維持と発展のための一つの鍵であるとの認識を共有した。
日本とポーランド共和国の間の経済関係の促進におけるEU拡大の積極的な意義を期待しつつ、双方は、EU拡大によって生じる利益を最大化するとともに、仮にマイナスの影響が生じる場合でもそれを最小化することの必要性を強調した。関連する諸問題は、両国の権限を有する省庁及び適当な機関のレベルにおいて協議される。
日本からの投資は、雇用の創出、技術水準の向上、輸出の促進に貢献しており、これらは全てポーランドの国家経済政策の観点から歓迎されることに注目しつつ、ポーランド側は、日本からの投資をさらに誘致するためのビジネス環境をさらに改善するためのあらゆる努力の枠組みにおいて、以下の意図につき表明した。
- 日本人の企業家が経済活動を行う上での諸環境を改善するための適切な手段を構築すること
- 外国投資の行政手続きの全てを扱う一元化された窓口を創設するため最大限の努力をすること
ポーランド側は、日本に投資促進事務所を設立する可能性につき検討する。
ポーランド側は、とりわけ自動車産業を含む先端技術分野における、ポーランド市場での日本の投資の大幅な増加に対し高い関心を表明した。
日本側は、日本人専門家を1年の期間で派遣することによって、ポーランド海外投資庁(PAIiIZ)が外国投資を誘致することへの支援を行うとの意図を表明した。
日本側はポーランド側に対し、「Invest Japan」などの国内の投資促進イニシアチブにつき説明し、ポーランド側はこの点に関する日本の経験を最大限活用する意図を表明した。
科学技術協力協定の枠組みにおける協力の前向きな成果に対する満足の意を表明しつつ、双方は、政府レベルによる協力の経験をはずみとして、科学者及び専門家の交流が商業ベースにおいても一層促進されることへの期待を表明した。これに関し、ポーランド側は、「ポーランド・日本情報工科大学」のプロジェクトを含む、これまでに日本側より提供された技術支援に対する感謝を表明し、双方は、情報技術、環境及び省エネルギーの分野において、両国間には協力の更なる潜在的可能性が存在するとの見解を共有した。「ポーランド・日本省エネルギーセンター」プロジェクト協定は、交渉の最終段階にある。双方は、協定の締結後は、遅延なくプロジェクトを開始するための努力を行う。
東方隣国諸国とのさらなる協力関係の促進に向けてのポーランド共和国の政策の方向性を踏まえつつ、また、日本との協力によってポーランドが取得した専門的知識と経験の他国への移転に注目しつつ、双方は、UNDPとの協調の下「ウクライナIT遠隔教育」の共同プロジェクトを通じた第三国に対する技術支援の拡大において協力する意思を表明した。
文化的側面及び市民交流
文化交流の意義を、相互理解の促進の基礎として認識しつつ、双方は、互いの伝統的な及び現代の魅力的な文化に対する関心を再確認し、両国の国民の相互理解を深める様々な分野における交流を拡大する意思を強調した。これに関し、二国間交流と並び、双方は「2005年日本・EU市民交流年」の成功に向け共同して準備を進めることを確認した。
「2005年愛・地球博」へのポーランドの参加は、日本におけるポーランドのこれまで最大のプロモーション・イベントになるだろう。これは、輸出、投資及び観光を網羅する広範な経済面での協力に関するポーランドの潜在的可能性を示す絶好の機会となるだろう。
双方は、「2005年愛・地球博」でのポーランド共和国の展示場が、最も好評を博する傑出した展示の一つになること、また両国国民間の相互理解のさらなる拡大に大きく貢献することへの期待を表明した。
双方は、観光は、国家間の人々と文化を結びつける最も重要な手段の一つであることを認識しつつ、双方向へより頻繁に観光客が行き来することへの希望を表明した。
小泉純一郎日本国総理大臣は、両国間の友好関係をさらに発展させ、経済関係の促進に関する課題につき引き続き協議し、二国間の協力関係を推進する新たな可能性を模索するため、ポーランド共和国レシェック・ミレル首相の日本訪問を招待した。招待は感謝をもって歓迎され、訪問の日時については外交チャンネルを通じて決定されることとなった。