二国間情報
小泉総理大臣の欧州訪問 (成果と概要)
小泉総理大臣は、8月17日から23日までの間、ドイツ、ポーランド及びチェコを訪問し、これら欧州3ヶ国首脳との会談等を行った。また、本訪問には上野官房副長官が同行した(総理の訪問は、ポーランドは13年振り、チェコは史上初)。
【成果】
1.総論
EUの中核国としてその統合・拡大を推進するドイツ、及び明年のEU新規加盟主要国であるポーランド及びチェコを訪問、将来に向けて日欧間の関係を一層堅固なものとすると共に、欧州統合の進展に対応して我が国の対欧州外交の幅を広げる基礎を作った。
2.国際課題
各国首脳と北朝鮮及びイラク等の主要国際課題(ドイツにおいてはアフガニスタンを含む)について緊密な協議を行い、認識の共有と協力の強化を図ることが出来た。特に北朝鮮問題については、核、ミサイル、拉致等の諸問題の平和的・包括的解決を追求する我が国の方針に対し、各国の明確な理解と支持が得られた。
3.二国間関係
首脳間の個人的信頼関係を深めると共に、各々の二国間関係の現状を踏まえ、関係強化に向けた具体的かつ有意義な協議を行った。
(イ) ドイツにおいては、「日本におけるドイツ年」事業名誉総裁への皇太子殿下の御就任につき確認するとともに、日独学術交流の活性化のための新たな取組みにつき説明。
(ロ) ポーランド及びチェコにおいては、EU加盟後も日本との関係をこれまで以上に強化していくことの重要性につき意見の一致を見、今後の長期的な二国間関係のあり方を記した「戦略的パートナーシップの構築に向けた共同声明」に署名。
(ハ) EU拡大は今年長期に亘るプロセスとなるところ、今回の共同声明は、これからの新規加盟国と我が国との関係を規定する上で一つのモデルケースとなる。
【概要】
1.各国における主要行事
(1)ドイツ : シュレーダー首相との会談
(2)ポーランド : ミレル首相との会談・共同声明署名、クファシニエフスキ大統領及び上下両院議長表敬
(3)チェコ : シュピドラ首相との会談・共同声明署名
2.訪問の概要
(1) EU拡大を踏まえた二国間関係
(イ) 10ヶ国が新規加盟する来年のEU拡大を機に、今後一層交流・協力を拡大したい、
1)特にドイツはEUの中核国であり、ドイツとの協力を強化していくことは、日本とEUの協力関係を推進していく上でも重要である、
2)新規加盟の主要国であるポーランド及びチェコに対しては、EU加盟後も日本との関係を更に強化していくことが双方の利益となる、共同声明を基盤として両国関係を発展させていきたい、また、双方向の投資を伸ばすために互いに投資環境を改善していきたい旨述べた。これに対して、各国首脳より以下の反応があった。
(i) ドイツよりは、このような面での日独協力の推進に賛意が表明された。
(ii) ポーランドよりは、EU拡大後の日本との関係のあり方につき賛同の意が示された後、日本は経済的にも重要なパートナーであるが、日・ポーランドの貿易額は未だ小さく今後拡大の余地がある、日・ポーランドの貿易バランスを改善したい旨の発言があった。
(iii) チェコよりは、経済大国日本との協力を促進したい、チェコのEU加盟は日本にとって障害となることはなく、むしろ利益になると信じている、日本企業を含む外国企業に対するチェコの投資優遇措置は、EU加盟に伴い何ら変更が生じない旨の発言があった。
(ロ) その他の二国間関係
(i) ドイツ:2005年に開催される「日本におけるドイツ年」事業への日本側の全面的な協力及び同事業の名誉総裁に皇太子殿下が就任される(注:皇太子殿下が日本での他国の紹介事業において名誉総裁を務められるのは初めて)ことが確認された。また、小泉総理より、これまでの友好関係の基礎となった世代が交代過程にあり、若い世代の相互理解、親近感を促進・育成する必要性を指摘した上で、若い世代に焦点を当てた日独学術交流の活性化のための新たな取組みを説明した。相互投資の促進を含む経済交流の一層の拡大に取り組むことで意見の一致を見た。
(ii) ポーランド:ミレル首相より、昨年の天皇皇后両陛下の御訪問に続き、13年振りの総理訪問を歓迎、共同声明を基盤として両国関係を発展させていくこと、ヴィシェグラード4ヶ国との協力を拡大するとの日本の意向を歓迎し、事務レベルの協議から発展させていきたい旨を表明。小泉総理より、ミレル首相の訪日を招待し、ミレル首相は謝意を表明。
(iii) チェコ:シュピドラ首相より、昨年の天皇皇后両陛下の御訪問に続き、史上初の総理訪問を歓迎、昨年の大洪水に際しての日本からの迅速な支援に謝意を表明。ヴィシェグラード4ヶ国との協力を拡大するとの日本の意向を歓迎し、チェコの議長国任期中にV4と日本との協力に関する提案をV4内で議論する旨を表明。
(注)ヴィシェグラード4ヶ国とは、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアを指す。
(2) 北朝鮮問題
小泉総理より、各首脳に対し、近々六者会合が開催されることを説明しつつ、日本としては、核問題と同様に、拉致問題も重視して対処すること、核、ミサイル、拉致等の問題の包括的解決を平和的かつ外交的に追求していく方針であることを説明し、今後とも緊密に協議していきたい旨述べた。これに対して各首脳よりは、以下のとおり我が国の立場に対する理解と支持が得られた。
(イ) ドイツよりは、小泉総理の発言の全てに賛同し、これを支援する、日本が北朝鮮を孤立させず国際社会に取り込むアプローチを評価する旨の発言があった。
(ロ) ポーランドよりは、日本に連帯を表明したい、朝鮮戦争以来中立国監視委員会メンバーである経験等を活かし日本と協力していきたい旨の発言があった。
(ハ) チェコよりは、北朝鮮を非核化することの必要性に全面的に賛成する、核拡散は国際社会として容認できない、チェコは北朝鮮と外交関係を有しており、可能な限り日本に対して協力できないかと考えている旨の発言があった。
(3) イラク問題
小泉総理は、各首脳に対し、我が国は、戦闘行為には参加しないとの原則の下、イラク復興支援において可能な限りの協力を行うとの考えを説明し、その中で協力できる分野については協力し合いたい旨述べた。これに対して各首脳よりは、以下の反応があった。
(イ) ドイツよりは、国連安保理決議1500は、国際社会がイラク復興に向けた協力を行う上の大きな前進だが依然改善の余地がある、独はイラクへの人道的支援を今後共継続する、またイラクの安全確保、安定、民主化の推進に大きな関心があり、日本との協力の余地も大きい旨の発言があった。
(ロ) ポーランドよりは、日本でイラク復興支援特措法が採択されたことを評価する、同法に基づく派遣が決定される場合にはポーランドの管轄区域における協力ができれば有意義である旨の発言があった。
(ハ) チェコよりは、チェコの対イラク支援について説明が行われた。また、日・チェコ首脳会談の際、両首脳は、19日(現地時間)の国連施設爆破事件について卑劣な攻撃であるとして、これを強く非難した。
(4) その他国際情勢(各国別)
(イ) アフガニスタン:ドイツにおいて、小泉総理より、アフガニスタンの安定に向けて独のアフガニスタンにおける貢献を高く評価する旨発言し、日独両国が各国の国情を踏まえつつ相互の協力を強化することで意見が一致した。
(ロ) 国連改革:ポーランド及びチェコは、国連改革の早期実現と日本の安保理常任理事国入りへの支持を明確なかたちで表明した。
(ハ) 捕鯨問題:チェコにおいて、最良の科学的証拠に基づいて取り組まれるべきであること、鯨を含む天然資源の保存と持続的利用の重要性について日チェコ両国の意見の一致を見た。