二国間関係
日本・ポーランド二国間関係概要
平成21年4月
在ポーランド日本国大使館
1.戦略的パートナーシップ
(1)小泉純一郎日本国総理大臣(当時)が2003年8月にポーランドを訪問した際、レシェック・ミレル・ポーランド共和国首相(当時)と共に発表した「日本国とポーランド共和国の戦略的パートナーシップに向けた共同声明」に基づき、両国は、伝統的な友好関係を更に戦略的なパートナーシップに発展させる方針を打ち出しました。
(2)また、2006年に麻生外務大臣(当時)は、「自由と繁栄の弧」をつくると題して、日本外交の新たなヴィジョンを提示しましたが、その中で民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済という普遍的価値を共有するポーランドを重要視しています。
(3)上記のような考えに基づき、両国は世界の安定と繁栄を確保するために種々の協力を展開しています。アフガニスタンの復興支援、治安の確保に両国は共に協力しています。また両国は、ウクライナの人づくり・市場経済化の促進に寄与するため、我が国の経済支援により設立・発展してきたポーランド・日本情報工科大学からの遠隔教育システム作りを支援しています。また、国際連合やV4+1(ヴィシェグラード4カ国と我が国)、ASEM(アジア欧州会合)など国際場裡における協力や緊密な政策対話を実施しています。
(4)このような緊密な関係は、両国の国交回復50周年を記念した2007年5月の両国の首相間、外相間の記念書簡の交換、また、同月の麻生外務大臣(当時)のポーランド訪問で確認され、その後活発な両国要人間の交流により継続されています。2008年10月のシコルスキ外務大臣の訪日時の日ポ外相会談の際には、今後の両国間関係の発展をうたい、具体的な協力分野について言及した共同プレスステートメントが発出されました。
(5)2008年12月のカチンスキ大統領の訪日の際の日ポ首脳会談では、伝統的に友好的な両国関係の基盤の下、国際社会の安定と繁栄のため、両国が一層協力していくことで一致しています。
(6)本年3月には、国交樹立90周年を記念し、両国首相、外相間の書簡交換が行われました。
2.二国間協力
1)日本は、1989年以降、ポーランドの市場経済化及び民主主義への円滑な移行に資するため、人づくりを中心とする技術協力や無償協力を中心に多岐に亘る分野で支援し、その総額は文化無償協力も合わせると約350億円に達します。現在では、新興ドナー国としてのポーランドとのODAに関する対話、協力が進展しています。
(2)特にポーランドの2004年のEU加盟後、近年は、日系企業のポーランドへの投資が急速に増大しています。2006年には、日系企業のポーランドへの投資は約8億ユーロに達し、2005年までの15年間の累計投資額とほぼ等しい額となったとも報じられています。2007年以降も日系企業の投資流入が続いています。2008年10月現在ポーランドに進出している日系企業数は232社であり、うち73社は自動車エンジン、タイヤ、液晶テレビ、その他関連製造業を含むハイテクの製造工場で、ポーランドの雇用創出、輸出促進、経済発展に大きく貢献しています。
二国間の貿易総額は、2008年には約25億ドルとなり、2001年からの7年間で約5.7倍に増加しました。
2008年6月初め、御手洗会長を団長とする日本経団連中東欧ミッションがポーランドを訪問し、カチンスキ大統領をはじめ政府要人と会談したことは、日本企業のポーランド市場への関心の高さを示しています。
(3)両国間では、今後更に、京都議定書の実施など環境・エネルギー分野での協力、科学技術協力、開発協力分野での協力、双方向の観光促進といった幅広い協力関係が構築されることが期待されています。
我が国の経済支援により設立・発展してきたポーランド日本省エネルギー技術センターは、現在ポーランドに求められている企業におけるエネルギー効率化などにおいて貢献しています。2008年10月には、両国政府間で京都議定書に基づく共同実施・グリーン投資スキーム協力に関する共同声明への署名が行われました。
また、2007年6月には第6回日・ポーランド科学技術協議が開催され、今後の両国間の科学技術協力の強化で一致しています。
(4)観光面では、13の世界遺産を有し、長い歴史と豊かな文化を持つポーランドを訪れる日本人観光客が増加しつつあります。日本人のポーランド訪問者数は2000年の26,410人から2007年の47,500人と増加しています。2007年10月末には、ワルシャワにおいてジャパン・ウィーク((財)国際親善協会主催、ワルシャワ市共催)が開催され、1,200名もの日本の方々が当地を訪問し、市民レベルでの文化・武道をはじめとする多岐にわたる交流が活発に展開されました。
3.両国間の「善意」の交流・文化関係
(1)日本とポーランドの間には、まさに「善意」と親善・友好の歴史があります(「日本・ポーランド関係のエピソード」を参照)。ポーランドの日本に対する関心は、日露戦争中に大いに高まりました。ポーランドの政治家、ロマン・ドモフスキとユゼフ・ピウスツキはこの時期、日本を訪れています。1920年以降、日本赤十字社の支援で約800名に及ぶポーランドのシベリア孤児が日本での療養を経て祖国帰還を果たしています。これを契機とした交流は、阪神淡路大震災時の日本の被災児をポーランド側が受け入れた際の元シベリア孤児の方々と被災児の感動の対面に至るまで長く続いています。
(2)第二次世界大戦中には、杉原千畝在カウナス日本領事館領事代理が「命のビザ」を発給し多数のユダヤ人の命を救っていますが、そのほとんどがポーランド系ユダヤ人であったといわれています。日本ではマクシミリアン・コルベ神父と共に来日したゼノ修道士らがフランシスコ派の伝道のみならず、日本の孤児や老人、身障者に対し献身的な慈善活動を行いました。
(3)両国民の双方の文化への関心は民族学者ブロニスワフ・ピウスツキの貴重なアイヌ研究に遡ることができます。ポーランドでは日本語、日本研究も伝統的に盛んで、1919年のワルシャワ大学日本語講座開設以降、クラクフ、ポズナン、ウッジ、トルンなど各地に日本語、日本研究の拠点が形成されています。2009年1月からは日本文化発信ボランティア6名がポーランド各地へ派遣され、日本語、日本文化の普及活動に従事しています。
(4)ポーランドでは茶道など日本文化への関心が強いのみならず、柔道、空手、合気道、剣道などの武道も盛んに行われています。更に著名な映画監督のアンジェイ・ワイダ氏と同夫人(クリスティナ・ザフファトヴィッチ氏)、その他の日ポ関係者の尽力により設立・発展してきたクラクフにある日本美術技術センターを通じた文化交流や最新の日本の技術展示なども益々盛んになっています。
(5)このような親密な両国民及び文化交流関係を背景に、2007年の日ポ国交回復50周年に際しては、多くの文化行事が実施され、日ポ双方の相互理解の促進に寄与しました。2009年は、国交樹立90周年に当たり、両国で数多くの記念事業の実施が予定されています。これにより、市民レベルの交流が益々拡大し、両国関係の基盤強化に繋がっていくことが期待されます。